金利が上がると株価が下がるのはなぜ?「お金の値段」から読み解く株価のしくみ

この記事の結論
「金利が上がると株価が下がる」とよく言われますが、その理由を説明できますか?金利は「お金の値段」。企業の借入コスト、預金や債券との比較、将来の利益の価値という3つのルートで株価に影響します。ただし「利上げ=株安」とは限りません。過去の4つの局面と、日米で長期金利が上がる2026年の今をもとに、やさしく解説します。
「金利が上がると株価が下がる」。その理由を、あなたは説明できますか?
2026年は、金利のニュースが続いています。日本では長期金利が9月に一時3.115%と約30年ぶりの高さになり、アメリカでも10月に長期金利が一時5.36%と、約24年半ぶりの水準まで上がりました。
ニュースで「金利上昇を嫌気して株安」という言葉を見ると、不安になる人も多いはずです。この記事では、金利と株価の関係を、できるだけやさしく整理します。
ポイント
この記事は、少しだけ応用編です。先にインフレで減るのは「残高」ではなく「買える力」やお金に働いてもらうとはを読んでおくと、よりわかりやすくなります。
そもそも「金利」とは何か?
金利とは、ひとことで言えば「お金の値段」です。お金を借りるときに払うコストであり、お金を預けたり貸したりしたときに受け取るリターンでもあります。
金利は、経済全体を動かすアクセルとブレーキのような存在です。
| 金利が低いと… | 金利が高いと… | |
|---|---|---|
| お金を借りる | 借りやすい(コストが低い) | 借りにくい(コストが上がる) |
| 企業や個人 | 投資や事業拡大、買い物をしやすい | 投資や消費をおさえる |
| 景気 | 拡大しやすい(アクセル) | 冷えやすい(ブレーキ) |
中央銀行(日本なら日本銀行、アメリカならFRB)は、景気が悪いときは金利を下げてアクセルを踏み、物価が上がりすぎているときは金利を上げてブレーキをかけます。
なぜ金利が上がると、株価は下がりやすいのか?
金利が上がると、株式市場には主に3つのルートで影響が出ます。
- 1
企業の借入コストが増える
銀行から借りるお金の利息が増え、設備投資や事業拡大がしにくくなる。企業の利益を圧迫する
- 2
株式以外の選択肢が魅力的になる
預金や債券の利回りが上がると、リスクをとって株を買わなくても利息がもらえる。株からお金が流れ出やすくなる
- 3
将来の利益の「今の価値」が下がる
株の価値は、将来の利益を今の価値に直して決まる。金利が上がると、その「今の価値」が小さくなる
1つ目と2つ目は、イメージしやすいと思います。少しわかりにくいのが3つ目です。ここを理解すると、金利と株価の関係が一気に見えてきます。
「将来の100万円」は、今いくらの価値?
たとえば、「10年後に100万円もらえる権利」があるとします。この権利は、今いくらの価値があるでしょうか。
金利が年5%なら、今61.4万円を預けておけば、10年後には約100万円になります。つまり、金利5%のときの「10年後の100万円」の今の価値は約61.4万円です。金利が高いほど、将来のお金の「今の価値」は小さくなります。これを現在価値といいます。
| 金利 | 1年後の100万円 | 10年後の100万円 | 30年後の100万円 |
|---|---|---|---|
| 年1% | 99.0万円 | 90.5万円 | 74.2万円 |
| 年3% | 97.1万円 | 74.4万円 | 41.2万円 |
| 年5% | 95.2万円 | 61.4万円 | 23.1万円 |
金利が1%から5%に上がったとき、1年後の100万円の価値は約4%しか下がりません。でも、30年後の100万円の価値は、74.2万円から23.1万円へ、約7割も下がります。
株の価値も、これと同じ考え方で決まります。会社が将来生み出す利益を、今の価値に直して合計したものが、株の本来の価値と考えられているのです。
特に金利の影響を受けやすい「成長株」
ここから、とても大事なことがわかります。利益の多くが遠い将来に期待されている会社ほど、金利が上がったときの影響が大きいということです。
- 1
テクノロジー
AI・半導体・ソフトウェアなど、将来の成長への期待が大きい会社
- 2
新しいエネルギー・EV
今の利益は小さくても、将来の成長が期待されている会社
- 3
バイオ・ヘルスケア
長い研究開発が必要で、利益が出るのが先になる会社
こうした会社は成長株(グロース株)と呼ばれます。今の利益よりも「将来どれだけ成長するか」という期待で株価が決まるため、金利の動きに敏感です。
一方で、今すでに安定した利益を出している会社(バリュー株と呼ばれることもあります)は、相対的に金利の影響を受けにくい傾向があります。
でも「金利上昇=株安」ではない
ここまで読むと、「金利が上がったら株は売ったほうがいい」と思うかもしれません。でも、実際の市場はそんなに単純ではありません。大切なのは、なぜ金利が上がったのかです。
同じ「金利上昇」でも、景気の良さから来るものと、インフレを抑えるためのブレーキから来るものでは、株価への影響がまったく違います。
過去の4つの局面から分かること
アメリカの過去の例を見ると、「利上げ=株安」「利下げ=株高」と単純には決めつけられないことがわかります。
| 年 | 何が起きた? | 金利 | 株価(S&P500) | 学べること |
|---|---|---|---|---|
| 2008年 | 金融危機(リーマン・ショック) | 大幅な利下げ | 大きく下落 | 利下げをしても、企業業績が悪化すれば株価は下がる |
| 2013年 | 金融緩和の縮小への警戒 | 長期金利が上昇 | 一時的に下落 | 実際に利上げしなくても、「これから上がる」という観測だけで株価は動く |
| 2019年 | 景気悪化への懸念 | 3回の利下げ | 上昇 | 景気悪化を防ぐための利下げは、業績が底堅ければ株価の支えになる |
| 2022年 | 急激なインフレ | 急速な利上げ | 大きく下落 | インフレを抑えるための急な利上げは、株価に大きなマイナス |
知らないと損するポイント
「利上げだから売る」「利下げだから買う」と、金利の動きだけで判断するのは危険です。金利の背景にある「景気・インフレ・企業業績・金融政策の意図」まで見ることが大切です。
では、なぜ2026年は「高金利」でも株価が強い?
2026年10月、アメリカの長期金利は一時5.36%まで上がりました。それでも、S&P500は7,600〜7,700ポイント前後と、歴史的に高い水準で推移しています。なぜでしょうか。
| 高金利による逆風 | 株価を支える追い風 |
|---|---|
| 企業の借入コストが増える | AI関連を中心とした大型テック企業の利益成長 |
| 預金や債券が魅力的になる | AI投資への大きな期待 |
| 成長株の将来の利益の価値が下がる | アメリカ経済の底堅さ |
今の市場では、高金利のマイナスよりも、企業の利益成長と成長への期待のプラスが上回っていると考えられます。
ただし、すべての株が強いわけではありません。指数を押し上げているのは、一部の大型テック・AI関連企業です。2026年10月中旬にも、物価の上振れやAI投資の過熱感への警戒から、AI関連株が売られて株価が大きく下がる場面がありました。期待が大きい分、期待がしぼんだときの下げも大きくなりやすいことは覚えておきましょう。
株価を動かす全体像
最後に、株価が動くしくみを1枚にまとめます。株価は「金利だけ」で動いているわけではありません。
- 1
インフレ・経済環境
物価、景気、世界情勢など
- 2
中央銀行の金融政策
利上げ・利下げ、お金の供給量
- 3
金利
お金の値段、資金のコスト
- 4
景気・企業の利益
経済成長、業績、投資意欲
- 5
株価
投資家の期待と、お金の流れ
私たちの資産形成に、どう生かす?
金利の知識は、短期の売り買いのためではなく、値動きに振り回されないために役立ちます。
- ニュースの意味がわかる:「金利上昇で株安」と聞いても、なぜ金利が上がったのかを考えられる
- 慌てて売らずにすむ:一時的な下落の理由がわかれば、長期の積立を続けやすい
- 偏りに気づける:成長株やAI関連に資産が偏っていないか、見直すきっかけになる
- 分散の大切さがわかる:株だけでなく、預金・債券・地域などを組み合わせる意味が見える
FPの相談現場から
ご相談で多いのが、「ニュースで株価が下がったと聞いて、積立をやめてしまった」というお話です。値下がりの理由がわかっていれば、続ける判断もしやすくなります。大切なのは「何が上がるか」を当てることではなく、「なぜ市場が動いているのか」を理解することです。
金利を正しく理解することは、長期的に資産を守り、育てていくための第一歩。
まとめ
- 金利は「お金の値段」。経済のアクセルとブレーキの役割を持つ
- 金利が上がると、借入コスト・ほかの選択肢との比較・将来の利益の今の価値、の3つのルートで株価は下がりやすい
- 特に、将来の成長への期待が大きい成長株は影響を受けやすい
- ただし「金利上昇=株安」ではない。なぜ金利が上がったのかで結果が変わる
- 2026年は高金利でも、AI関連を中心とした利益成長が株価を支えている。ただし一部の企業への偏りに注意
よくある質問
金利が上がりそうなときは、投資をやめたほうがいいですか?
金利の動きだけで投資をやめる必要はありません。過去を見ても、利上げ局面で株価が上がったこともあれば、利下げ局面で大きく下がったこともあります。長期の資産形成では、金利の予想に合わせて売り買いするよりも、長期・積立・分散を続けることが基本です。
日本の金利が上がると、日本株はどうなりますか?
アメリカと同じく、企業の借入コストが増える、預金の魅力が増すなど、株価にはマイナスの面があります。一方で、銀行などは金利上昇で利益が増えやすい業種です。また、金利が上がる理由が景気の良さであれば、株価にとってプラスに働くこともあります。
金利が上がると、住宅ローンや預金はどうなりますか?
長期金利が上がると、固定型の住宅ローン金利も上がりやすくなります。変動型の金利は日銀の政策金利の影響を受けます。一方で、預金金利も少しずつ上がっています。借りる側・預ける側の両方から、金利の影響を確認しておきましょう。

