相続税の基礎控除はいくら?計算方法と「うちはかかるか」3分チェック

この記事の結論
相続税は、遺産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を超えたときだけかかります。配偶者と子2人なら4,800万円が目安。実際に課税されたのは亡くなった人の10.4%(令和6年分)です。人数の数え方、自宅の土地や死亡保険金の扱い、2027年から延びる生前贈与の足し戻しまで、FPが整理しました。
相続税がかかるのは、遺産が「基礎控除」を超えたときだけです。
「親の相続、うちも税金がかかるのかな」。40代に近づくと、帰省のたびにふと気になる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、相続税がかかるのは、遺産の合計が3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えたときだけです。超えなければ相続税はかからず、申告も原則いりません。相続人が配偶者と子2人なら、目安は4,800万円です。
ただし、「自宅の土地」「死亡保険金」「亡くなる前の贈与」の扱いで、結果は大きく変わります。この記事では、基礎控除の計算から「うちはかかるか」を3分で確かめる手順、2027年から変わる生前贈与のルールまで、順番に整理します。
相続税の基礎控除とは?計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
基礎控除とは、遺産からまず差し引ける「税金がかからない枠」のことで、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します(国税庁 No.4152、令和8年4月1日現在の法令)。遺産がこの金額以下なら、相続税はかかりません。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | よくある家族の形 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 親が亡くなり、子が1人 |
| 2人 | 4,200万円 | 親が亡くなり、子が2人 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者+子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者+子3人 |
| 5人 | 6,000万円 | 配偶者+子4人 |
法定相続人の数え方で間違えやすい3つのこと
- 1
相続放棄した人も数に入れる
家庭裁判所で相続放棄をした人がいても、「放棄がなかったもの」として人数を数えます
- 2
養子は人数に上限がある
実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までしか数えられません
- 3
2回目の相続は人数が減る
父→母→子の順に相続が起きると、2回目は配偶者がいない分、基礎控除が600万円小さくなります
知らないと損するポイント
両親のうち1人目が亡くなったとき(一次相続)は配偶者の特例で税金が少なく済んでも、2人目のとき(二次相続)に基礎控除が減り、税金が大きくなるケースがあります。親の相続は「2回分」で考えるのがポイントです。
実際に相続税がかかる人はどれくらい?約10人に1人
相続税がかかる人は、亡くなった人の約10人に1人です。国税庁によると、令和6年に亡くなった約160.5万人のうち、相続税の申告書が出されたのは約16.7万人、課税割合は10.4%でした(「令和6年分 相続税の申告事績の概要」令和7年12月公表)。
令和5年分
9.9%
亡くなった人のうち課税された人の割合
令和6年分
10.4%
前年から0.5ポイント上昇
※国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
課税された人の遺産の中身は、現金・預貯金等が約35%、土地が約30%、有価証券が約18%(同資料)。地価や株価が上がると、「思っていたより財産があった」家庭が増えます。
ポイント
都市部に持ち家があり、退職金の残りと株・投資信託を持っている――30〜40代の読者の親世代は、ちょうど「境目」にいる人が多い層です。「うちはお金持ちではないから関係ない」と決めつけず、一度ざっくり計算してみましょう。
「うちはかかる?」3分チェックのやり方
財産をざっくり足して、借入金を引き、基礎控除と比べるだけです。正確な評価は税理士の仕事ですが、「かかりそうか、かからなさそうか」は次の手順で見当がつきます。
- 法定相続人を数えて、基礎控除額を出す
- 財産をざっくり足す(預貯金・株・投資信託・自宅・生命保険金)
- 借入金と葬式費用を引く
- 亡くなる前の贈与を足す(2026年中の相続なら3年分、2027年以降は2024年1月以降の分)
- 基礎控除を超えたら、特例を使えるか確認し、税理士への相談を検討する
| 項目 | どこで調べる | メモ |
|---|---|---|
| 預貯金 | 通帳・ネットバンク | 口座ごとに |
| 株・投資信託 | 証券会社の残高 | 時価で |
| 自宅の土地 | 路線価×面積 | 路線価は国税庁のサイトで確認 |
| 自宅の建物 | 固定資産税の課税明細書 | 固定資産税評価額 |
| 死亡保険金 | 保険証券 | 非課税枠を引いた額 |
| 借入金・葬式費用 | ローン残高など | マイナスする |
結果を大きく変える3つのポイント
相続税がかかるかどうかは、「自宅の土地」「死亡保険金」「亡くなる前の贈与」の3つで大きく変わります。
① 自宅の土地:小規模宅地等の特例で最大80%減
亡くなった人の自宅の土地を、配偶者や同居していた子などが相続すると、330㎡までは評価額を80%減らせます(国税庁 No.4124)。
| 土地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 自宅(特定居住用宅地等) | 330㎡ | 80% |
| 事業用(特定事業用宅地等など) | 400㎡ | 80% |
| 貸付用(アパート・駐車場など) | 200㎡ | 50% |
知らないと損するポイント
この特例は、使った結果、税額がゼロになっても申告が必要です。原則として、申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割がまとまっていることも条件になります。
② 死亡保険金:「500万円×法定相続人の数」まで非課税
相続人が受け取る死亡保険金は、500万円×法定相続人の数までは相続税がかかりません(国税庁 No.4114)。
- 逆に、非課税枠を超えた分は「みなし相続財産」として遺産に足します。預貯金だけを見て「基礎控除以下」と判断するのは早計です
- 相続を放棄した人や、相続人ではない人(孫など)が受け取った保険金には、非課税枠を使えません
③ 亡くなる前の贈与:2027年から足し戻す期間が延びていく
亡くなる前に受けた贈与(暦年贈与)は相続財産に足し戻され、その期間は3年から7年へ段階的に延びています(国税庁 No.4161)。
| 相続が起きた時期 | 足し戻す贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 亡くなる前3年分 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日以降の贈与すべて |
| 2031年1月1日以降 | 亡くなる前7年分 |
- 延長された期間(3年より前)の贈与は、合計100万円までは足し戻さなくてよい扱いがあります
- 贈与税がかからなかった年間110万円以下の贈与も、期間内なら足し戻しの対象です
- 「毎年110万円ずつ贈与しているから大丈夫」という考え方は、2027年以降は通用しにくくなります
基礎控除を超えたら税額はいくら?計算例
基礎控除を引いた残りを、法定相続分どおりに分けたと仮定してそれぞれに税率をかけ、合計したものが「相続税の総額」です(国税庁 No.4155)。
| 取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | − |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
例1:遺産1億円、相続人は配偶者と子2人
- 基礎控除は4,800万円 → 課税される遺産は5,200万円
- 配偶者の分:2,600万円×15%−50万円=340万円
- 子1人の分:1,300万円×15%−50万円=145万円(2人で290万円)
- 相続税の総額は630万円。法定相続分どおりに分けると、配偶者は「配偶者の税額軽減」で納税額ゼロ、子2人で合計315万円
例2:遺産8,000万円(うち自宅の土地4,000万円)、相続人は子2人
特例なし
470万円
課税される遺産3,800万円
特例あり(自宅の土地を80%減)
60万円
課税される遺産600万円
※概算。同居していた子が自宅を相続するなど、特例には居住・保有の要件があります
同じ遺産でも、自宅の土地の扱いだけで税額が8分の1近くになります。「誰が自宅を相続するか」は、税金の面でも大きな分かれ目です。
FPの相談現場から
「親の財産はよくわからないけれど、たぶん大丈夫」というご相談はとても多いです。一緒に書き出してみると、自宅の土地と退職金の残り、加入していた保険の保険金を足して基礎控除を超えていた、というケースは珍しくありません。年末年始の帰省は、財産の「金額」を聞き出すよりも、「どこに何があるか」を確かめるよいきっかけになります。
相続税の準備チェックリスト
法定相続人の人数をなんとなく数えている
放棄や養子のルールも含めて、基礎控除額を正確に出す
自宅の土地を「売れそうな値段」で考えている
路線価×面積で評価し、特例を使えるかも確認する
死亡保険金を遺産に入れていない
非課税枠(500万円×人数)を超えた分は足して判定する
毎年の贈与は110万円以下だから安心と思っている
2027年以降の相続は2024年以降の贈与が足し戻しの対象になる
基礎控除以下なら何もしなくていいと思っている
特例で税額をゼロにする場合は、10か月以内の申告が必要
まとめ
- 相続税は、遺産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えたときだけかかる
- 課税されたのは亡くなった人の約10人に1人(令和6年分10.4%)。都市部に自宅がある家庭は境目に入りやすい
- 自宅の土地の特例、死亡保険金の非課税枠、亡くなる前の贈与の足し戻しで、結果は大きく変わる
- 特例を使って税額をゼロにする場合も、亡くなったことを知った翌日から10か月以内の申告が必要
親の医療費や入院への備えは入院費用の自己負担はいくら?、年内に済ませたい税金の手続きは年内にやるお金の手続きでまとめています。
よくある質問
相続税の基礎控除以下なら、申告は必要ありませんか?
原則として不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額をゼロにする場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内の申告が必要です。
相続放棄した人は、基礎控除の人数に入りますか?
入ります。相続放棄があっても、放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。ただし、放棄した人が受け取った死亡保険金には非課税枠を使えません。
死亡保険金も相続財産に含まれますか?
含まれます(みなし相続財産)。相続人が受け取る場合は、500万円×法定相続人の数までが非課税です。
生前贈与は、いつまでさかのぼって足し戻されますか?
2026年中の相続は亡くなる前3年分、2027〜2030年の相続は2024年1月1日以降の贈与、2031年以降は亡くなる前7年分です。