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生前贈与の選び方|暦年課税と相続時精算課税の違いを比較

監修:独立系ファイナンシャルプランナー
 | 読了 約8分
生前贈与の選び方|暦年課税と相続時精算課税の違いを比較のイメージ

この記事の結論

生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方式があり、贈与する人ごとに選べます。暦年課税は年110万円まで非課税ですが、相続前の贈与は足し戻され、その期間は2027年から延びます。相続時精算課税は一度選ぶと戻せません。違いと選び方をFPが整理しました。

生前贈与は、「いくら渡すか」より先に「どちらの方式で渡すか」を決めましょう。

「子どもや孫に、生きているうちに財産を渡したい」。そう考えたとき、まず知っておきたいのが、贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方式があることです。

結論から言うと、少しずつ長く渡すなら暦年課税、まとまった額を早めに渡すなら相続時精算課税が検討の対象です。ただし、相続時精算課税は一度選ぶと、同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません(国税庁 No.4103)。また、暦年課税の贈与も、相続の直前なら相続財産に足し戻されます。この記事では、2つの違いと選び方を、金額の例つきで整理します。

暦年課税と相続時精算課税の違いは?まず比較表で

2つの方式の違いは、「いくらまで非課税か」と「相続のときにどう扱われるか」です。

2つの方式の比較(令和8年4月1日現在の法令等)
項目暦年課税相続時精算課税
毎年の非課税枠年110万円(基礎控除)年110万円(基礎控除)+累計2,500万円(特別控除)
110万円を超えたとき超えた部分に10〜55%の贈与税特別控除の範囲内なら贈与税は0。超えた分は一律20%
相続のときの扱い相続前の一定期間の贈与は足し戻し年110万円を引いた残りを、贈与時の価額で相続財産に足し戻し
贈与する人制限なし贈与の年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母
受け取る人制限なし贈与の年の1月1日時点で18歳以上の子・孫など
手続き110万円超なら申告初年度に「相続時精算課税選択届出書」を提出
戻せるか—同じ贈与者からは、暦年課税に戻せない

選ぶ単位は「贈与する人ごと」です。たとえば、父からの贈与は相続時精算課税、母からの贈与は暦年課税、というように分けられます。

ポイント

「どちらが得か」は、贈与する額・期間・相続財産の総額で変わります。先に、自分の家の相続税がかかりそうかを確かめておきましょう(相続税の基礎控除はいくら?)。

暦年課税:年110万円まで非課税。ただし「足し戻し」に注意

暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計から110万円を引いた残りに、贈与税がかかります。合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません(国税庁 No.4402)。

110万円を超えると、超えた部分に10〜55%の税率で課税されます。受け取る人が18歳以上で、父母・祖父母などから受ける場合は、有利な「特例税率」が使えます(国税庁 No.4408)。

特例税率(父母・祖父母などから18歳以上の子・孫への贈与)
基礎控除後の金額税率控除額
200万円以下10%なし
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円
暦年課税で1,000万円を一度に贈与した場合(特例税率)

基礎控除後

890万円

1,000万円−110万円

贈与税

177万円

890万円×30%−90万円

※計算例です。ほかに受け取る財産がない場合です。

暦年課税の落とし穴:相続前の贈与は「足し戻し」される

相続や遺贈で財産を受け取る人が、亡くなった人から相続前の一定期間に受けた暦年課税の贈与は、相続財産に足し戻して相続税を計算します。この期間は、これまで3年でしたが、段階的に7年へ延びています(国税庁 No.4161)。

相続が起きた時期と、足し戻される贈与
相続が起きた時期足し戻される贈与
2026年12月31日まで亡くなる前3年以内
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日から亡くなる日まで
2031年1月1日以降亡くなる前7年以内

知らないと損するポイント

延びた期間の贈与は、合計100万円までは足し戻さなくてよい扱いがあります。ただし3年以内の贈与には使えません。年110万円以下で贈与税がかからなかった分も、期間内なら足し戻しの対象になります。

つまり、「毎年110万円ずつ」の暦年贈与は、長く続けるほど効きますが、相続までの期間が短いと節税になりにくい方式です。

相続時精算課税:2,500万円まで贈与税なし。ただし「戻せない」

相続時精算課税は、贈与を受けるときの税金を軽くして、相続のときに「精算」する方式です。1年分の贈与から110万円を引き、さらに累計2,500万円の特別控除を引いた残りに、一律20%の贈与税がかかります(国税庁 No.4409)。

特別控除を使うには、贈与税の期限内申告が必要です。使い切れなかった特別控除は、翌年以降に繰り越せます。

相続時精算課税で1,000万円を一度に贈与した場合

基礎控除後

890万円

1,000万円−110万円

贈与税

0円

特別控除2,500万円の範囲内

※相続のときに、890万円が相続財産に足し戻されます。

相続のときは、年110万円を引いた後の贈与財産を、贈与したときの価額で相続財産に足し戻します。すでに払った贈与税相当額は、相続税から差し引かれます(国税庁 No.4409)。

ポイント

2024年からは、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができました。この110万円は相続財産に足し戻されず、贈与税もかかりません(国税庁 No.4103)。

相続時精算課税を使う前に確認したい3つのこと

選ぶ前のチェックポイント
  1. 1

    一度選ぶと戻せない

    同じ贈与者からの贈与は、以後すべてこの制度になり、暦年課税には変更できません

  2. 2

    届出が必要

    贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に、税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を出します

  3. 3

    相続税の節税ではない

    贈与税を後ろにずらす仕組みです。財産が増えても、足し戻しは贈与時の価額で固定されます

どちらを選ぶ?目的別の考え方

選び方の軸は、「いつまでに」「いくら」「何のために」渡すかです。

Q毎年110万円以下を、5年以上続けて渡せそうですか?
はい暦年課税が候補。足し戻しの期間(最大7年)も確認する
いいえ次の質問へ進む
Q数百万円〜まとまった額を、早めに渡したいですか?(例:住宅資金・事業の資金)
はい相続時精算課税が候補。戻せない点を理解したうえで検討する
いいえ急いで贈与せず、まず家族の財産の全体像を整理する
目的別の目安(一般的な考え方)
目的向きやすい方式理由
少しずつ長く渡したい暦年課税年110万円以下なら贈与税0。長く続けるほど効く
まとまった額を早く渡したい相続時精算課税累計2,500万円まで贈与税0。使い道を早めにつくれる
相続までの期間が短そう相続時精算課税も検討暦年課税は足し戻しで効果が薄れやすい
財産が今後大きく増えそう相続時精算課税も検討足し戻しは贈与時の価額で固定される
相続税がかからなさそうどちらも大きな差は出にくい贈与税の負担や手続きの手間で選ぶ

FPの相談現場から

ご相談では「とりあえず子どもに渡しておきたい」という方が多いのですが、まず贈与者の老後資金と生活費を確認します。渡しすぎて自分の生活資金が足りなくなるのが、いちばん避けたい失敗です。次に、きょうだい間の公平さと、相続税がかかりそうかを一緒に確認します。

生前贈与の見直しチェックリスト

贈与でよくある見落とし
注意点対策
  • 「年110万円以下だから安心」と思っている

    相続前の期間は足し戻しの対象。2027年から期間が延びる

  • 相続時精算課税を、とりあえず選ぶ

    一度選ぶと暦年課税に戻せない。贈与者ごとに慎重に決める

  • 贈与する人の老後資金を考えていない

    まず自分の生活費・医療費・介護費を確保してから渡す

  • きょうだい間で説明していない

    贈与の内容を家族で共有し、のちの相続争いを防ぐ

  • 贈与の記録を残していない

    贈与契約書や振込の記録を残す。申告が必要な年は期限(翌年2月1日〜3月15日)を守る

まとめ

  • 生前贈与には、暦年課税と相続時精算課税の2方式があり、贈与する人ごとに選べる
  • 暦年課税は年110万円まで非課税。ただし相続前の贈与は足し戻され、その期間は2031年に向けて最大7年へ延びる
  • 相続時精算課税は、年110万円+累計2,500万円まで贈与税0。ただし一度選ぶと暦年課税には戻せない
  • 方式を選ぶ前に、贈与者の老後資金と家族の財産の全体像を確認する

贈与の前に確認したい相続税の計算は相続税の基礎控除はいくら?、年内にやっておきたい手続きは年内にやっておきたいお金の手続きで解説しています。

よくある質問

暦年課税の贈与は、年間いくらまで非課税ですか?

1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません。110万円を超えた部分に課税され、申告は翌年2月1日から3月15日までです。

相続時精算課税は、誰から誰への贈与で使えますか?

贈与の年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母などから、同じ時点で18歳以上の子・孫などへの贈与で使えます。贈与者ごとに選びます。

相続時精算課税を選んだあと、暦年課税に戻せますか?

戻せません。一度選ぶと、その贈与者からの贈与は以後すべて相続時精算課税の対象になります。

暦年課税の贈与は、相続のときに足し戻されますか?

相続や遺贈で財産を受け取る人が、亡くなる前の一定期間に受けた贈与は足し戻されます。2026年中の相続は3年、2027〜2030年は2024年以降、2031年以降は7年です。

相続時精算課税で贈与した財産は、相続のときいくらで計算しますか?

贈与したときの価額から、年110万円の基礎控除を引いた額を相続財産に足し戻します。その後に価値が変わっても、足し戻す額は変わりません。

参考資料・出典

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